トランス(変圧器)の役割と仕組みを理解しよう

私たちの生活の中には、さまざまな電気製品が溢れています。その製品の中心には、電気エネルギーを適切に変換し、私たちの生活を支える”トランス”が存在します。しかし、その実態について理解している方は少ないのではないでしょうか。

この記事では、電力を効率よく変換し、電気製品を安全に使うための大切な役割を果たすトランスの基本的な構造と働きを解説します。

トランス(変圧器)とは

トランス(変圧器)は、電圧を調整するための便利なツールです。その働きを分けると、電圧を上げるものと下げるものがあり、それぞれアップトランス(昇圧トランス)、ダウントランス(降圧トランス)と呼ばれます。これら二つの役割を兼ね備えたものをアップダウントランスと言います。

私たちの周りでは、さまざまな場面でトランスが活躍しています。例えば、家庭用のACアダプターにもトランスが内蔵されています。

なぜこのようなトランスが必要なのでしょうか?それは電力の送達効率に関わってきます。電力の送達には、高い電圧の方が効率的なのです。電力損失は、電流の二乗に比例するため、高い電圧を用いて電流を少なくし、結果的に損失を抑えることが可能です。

発電所で作られた電気は、高電圧の状態で流れて、変電所や変電設備で必要な電圧に変換されます。そして、私たちの家へと送られてきます。このとき、電圧の変換にはトランスが欠かせません。

さらに、各種の電子機器が必要とする電圧は、機器ごとに異なります。スマートフォンやタブレットの充電には、主に5Vが必要となりますが、家庭用電源の電圧は100Vです。こうした場合でも、トランスが電圧を適切に調整してくれます。

このように、トランスは私たちの生活のさまざまな場面で活躍しており、電気の送達効率を高める重要な役割を果たしているのです。

トランスの利用目的

トランスは、電力を扱ううえで欠かせない存在です。その最も基本的な機能は、電圧や電流の変換です。これにより、電力の伝送や分配、さらには電気機器の動作に必要な電圧や電流を適切に得ることが可能となります。

しかしこれらの基本的な利用法だけでなく、トランスには他にも多くの活用方法があります。

電流の抵抗を変える

1つめは、電流に対する抵抗を変化させる能力です。これにより、回路の特性を調整したり、あるいは回路間の結合や分離を行ったりすることができます。

信号の周波数を変える

2つ目は交流信号の周波数成分を変化させる機能です。これにより、信号の増幅や減衰、フィルタリングや変調など、様々な信号処理を実現することが可能となります。

絶縁のため

トランスが果たす役割の一つに、絶縁という要素があります。

まず、トランスは電流を取り込み、そのエネルギーを磁力へと変換します。この磁力を介して別の導線に電力を伝えるのですが、ここでのポイントは、電力を伝える入力側と出力側の導線が物理的につながっていないということです。

これが重要な役割を果たす理由は、異常な電流が流れた場合でも、その導線が直接接続されていないため、問題が広がるのを防げるからです。つまり、万が一出力側に接続された電気機器が故障しても、感電や漏電の危険を防ぐことができます。

トランスの基本的な構造

トランスの利用目的が分かったところで、トランスの基本的構造を見ていきましょう。

トランスは、電流を変換する役割を持っています。その具体的な形状は、鉄の中心部に一次コイルと二次コイルが巻きつけられた形をしています。一次コイルに電流が流れると、その変化に応じて磁界が生まれます。そして、その磁界が二次コイルを通ると、そこに電気が流れ、これが誘導起電力と呼ばれます。

重要なのは、この二次コイルで得られる電圧は、一次コイルと二次コイルの巻き数の比率によって決まるということです。これがトランスが電圧を変換できる理由です。ちなみに、コイルを巻く枠を「ボビン」、電線を「マグネットワイヤ」、中心部を「コア」と呼びます。

この原理は、私たちの生活で使われるワイヤレス充電にも利用されています。しかし、トランスは交流電圧を変換するために使われるもので、直流電流をそのまま流すと、トランスとしては機能しません。なぜなら、直流電流を流すと、コアが電磁石になってしまい、その極性が変わらなくなるからです。

ところで、トランスとコイルの違いは何でしょうか?実は、トランスはコイルの一種で、電圧を変換する機能を持っていることが特徴です。コイルという言葉は、電磁界を作り出すために使われる電線の巻き物全般を指します。それが電圧を変換する役割を果たすものがトランスなのです。

トランスに関連する代表的な用語とその意味

トランスと言えば一般的には電流を変換する装置と認識されるでしょう。しかし、トランスはその他にもさまざまな用途に合わせて種類も存在します。

ここではトランスに関連する代表的な用語とその意味を解説します。

超高圧変圧器

超高圧変圧器は、その名の通り非常に高い電圧を扱うものです。発電所や変電所など、大きな電力を扱う施設で使われるのが一般的です。

特高変圧器

特高変圧器は、大規模な工事現場や電気設備試験場などで使用され、電力の大きな作業に不可欠な存在です。

高圧変圧器

高圧変圧器は工場や病院、商業施設など、電力消費の多い場所で活躍します。屋上や外壁沿いに設置されることが多く、キュービクルと呼ばれる高圧受電施設に組み込まれていることが多いです。さらに、トランスには多くの種類とその名前があります。

電源トランス

電源トランスは家庭のコンセントから得られる電力を電気機器に適した電圧に変換します。

高周波トランス

高周波トランスは無線通信やスイッチング電源など、高い周波数を必要とする場所で使われます。

スイッチングトランス

スイッチングトランスは直流電圧を変換するために活用されます。

ノイズカットトランス

ノイズカットトランスは電磁ノイズを分離し、回路がノイズによる影響を受けないようにする役割を果たします。

テスラコイル

テスラコイルは高周波、高電圧を発生させるための装置で、二次コイルの共振を利用します。

チョークコイル

は電源ラインのノイズフィルターとして使われ、PWMにより制御することで電圧を降圧・昇圧させることが可能です。

インバータトランス

インバータトランスは直流電流を昇圧させる役割を果たします

まとめ

この記事では、トランス基礎知識ついて解説してきました。

トランスにも様々な種類がありそれぞれ違う役割があることをお判りいただけたでしょうか?ここで解説した知識が少しでも役立てばうれしく思います。